幸いなことに色で列が分けられているため、色さえ決めればそこまで時間はかからなそうだとシルディアは独り言ちる。

(赤いドレスがやたら多いのは、オデルの瞳の色だからね)

 自身の瞳と同じ色のドレスを贈るというのは、独占欲の現れだ。
 自分のものだと周りに知らしめるためのだけの行為。

(他にない特殊な色であればあるほど、誰のものかわかりやすい。赤色の瞳はどこを探してもガルズアース皇国の皇族しかいないもの。誰のものか明らかね)

 着替える時間を渋々受け入れたオデルが満足する装いをしなければならない。
 中途半端なドレスを選べば、今後二度とドレスに着替えさせてもらえないかもしれない。
 そう考えてしまうほど、彼の執着は度を超えている。

「赤色のドレスにしましょう」
「かしこまりました。では始めましょう」
「ええ。お願いね。頼りにしてるわ」
「! はい」

 無表情だったヴィーニャの紅消鼠の瞳が見開かれる。
 しかしそれはほんの一瞬で見間違いかとシルディアは気にも止めなかった。