「何か問題が?」
「いや、問題まみれでしょう!! あなたはっ」
「あなたではなくオデルだ」

 シルディアはそこに突っ込むのかと考えつつ息をついた。
 登った血を降ろさなければと努めて冷静に呟く。

「オデルは皇王でしょ? 安全を考えたら護衛はつけないと」
「なぜ?」
「な、なぜって……皇族は守られるもので……」

 一瞬目を見開いたオデルだったが、すぐに柔らかな表情に変わった。

「大丈夫。俺は竜族の長。竜の王だ。シルディアも知っているだろう?」
「そ、れは、もちろん知っているわ」
「この国で俺より強い者はいない。安心して」

 幼子をあやすような微笑みでオデルはシルディアの頭を撫でる。
 純粋な強さという面でオデルの右に出る者がいないのは確かだろう。
 幼い彼が戦争の第一線で活躍したというのは周知の事実だ。

(わたしが七歳の頃。皇国が他国と開戦した戦で指揮を取ったのはオデルだったはず。強さは確かでしょうね)