溢れんばかりに見開かれた赤い瞳にシルディアは語りかける。

「寝起きが悪いのは知っているもの。二度寝ぐらい日常茶飯事よ。ねぇ、オデル?」
「なにを勘違いしているのか分からないけど、この体はもうぼくのものだよ」
「あらそう? じゃあ、わたしの気が済むまでオデルに喋りかけてもいいでしょう? 何を焦る必要があるの?」

 眉をひそめる初代竜の王をシルディアは構わない。
 シルディアは眠るオデルへと語り続ける。
 胸の中の熱い思いを全てぶつけるように。

「オデルが大切にしてくれてるって分かったの。やっとゆっくり喋れると思ったのに、オデルはわたしと話したくない?」
「本当、今回のつがいはうるさいね」
「わたしが話しかけているのはオデルよ。ねぇ、早く声を聞かせて?」

 頬を包んだ手で、頬の輪郭をなぞるように親指を動かす。
 くすぐったそうに身をよじった初代の口から苦しげな声が漏れる。

「ぐっ、しぶといね。君も。それじゃあぼくも君を消すために動くね」
「! オデル!?」

 何かを訴えかけるような瞳に見つめられ、ゆっくりと口が動いた。

(に、げ、ろ……? 逃げろ!?)

 シルディアが理解した瞬間。
 最後の足掻きと言わんばかりに初代竜の王から突風が巻き起こる。