シルディアの背後から何者かが走ってくる音が微かに聞こえる。
聞こえた足音はとても軽く、男のものではないと用意に判断できた。
「シルディア様! ご無事で――っ!!」
シルディアの前に躍り出たヴィーニャが息を詰めた。
ヴィーニャを見留めた男が、優雅でいて残酷に語りかける。
「私の可愛い操り人形。やっとアレを倒したのですか? 随分と時間がかかりましたね」
「父上。なぜここにいるのですか」
「それはもちろん、竜の王からこの国を救うためだよ。知っているだろう?」
「知っているも何も私はもう家を捨てた身です。貴方とは一切関係のない人間です」
「馬鹿も休み休み言いなさい。私の血は、確かに流れているますよ。その唯一無二の瞳が動かぬ証拠」
「……貴方に指図されるだけの弱い娘ではありません。シルディア様は、私がお守りします」
ヴィーニャの言葉にシルディアは悟った。
(ヴィーニャのファミリーネームを思い出せなかったのは、一度も見聞きしたことがなかったからね)
一人納得していると、男が失笑を零す。
「家のために何も出来なかった能無しが今更何をしても変わりませんよ。それに、なんのために私が時間稼ぎをしていたと思っているのですか?」
時間稼ぎをしていたのはシルディアだけではなかった。
そう宣言され、シルディアは身構える。
「無駄ですよ。これは回避不可能ですから」
そう告げた男の足元から白煙が漂い始めた。
ローブの中に何か仕込んでいたのだろう。
休憩室の時と同じ白煙が、またシルディア達に襲い来る。
聞こえた足音はとても軽く、男のものではないと用意に判断できた。
「シルディア様! ご無事で――っ!!」
シルディアの前に躍り出たヴィーニャが息を詰めた。
ヴィーニャを見留めた男が、優雅でいて残酷に語りかける。
「私の可愛い操り人形。やっとアレを倒したのですか? 随分と時間がかかりましたね」
「父上。なぜここにいるのですか」
「それはもちろん、竜の王からこの国を救うためだよ。知っているだろう?」
「知っているも何も私はもう家を捨てた身です。貴方とは一切関係のない人間です」
「馬鹿も休み休み言いなさい。私の血は、確かに流れているますよ。その唯一無二の瞳が動かぬ証拠」
「……貴方に指図されるだけの弱い娘ではありません。シルディア様は、私がお守りします」
ヴィーニャの言葉にシルディアは悟った。
(ヴィーニャのファミリーネームを思い出せなかったのは、一度も見聞きしたことがなかったからね)
一人納得していると、男が失笑を零す。
「家のために何も出来なかった能無しが今更何をしても変わりませんよ。それに、なんのために私が時間稼ぎをしていたと思っているのですか?」
時間稼ぎをしていたのはシルディアだけではなかった。
そう宣言され、シルディアは身構える。
「無駄ですよ。これは回避不可能ですから」
そう告げた男の足元から白煙が漂い始めた。
ローブの中に何か仕込んでいたのだろう。
休憩室の時と同じ白煙が、またシルディア達に襲い来る。