立ち上がる隙なんか与えない。
しゃべらす隙も、与えない。
まるで馬乗り。
倉田くんの上に乗っかって、そのままガクガクと何度も胸ぐらを揺らしているのは───結多くん。
「おいっ、結多……!おまえ何してんだよ…!!やめろってマジ!!」
「なに、喧嘩……?結多が…?うそでしょ…!?」
ぞろぞろと取り囲む生徒たち。
人気者の水篠 結多なんだ。
普段から日だまりのような温かさを常に見せている男の子なのだ。
これが冗談なのか本当なのか、いまだに半数以上が疑っている。
としても、だんだん笑えなくなってきた。
「なんだよいじめとか浮くとか可哀想って。もっと浮くってなんだよ、もっとってなんだよああ!?なにが…笑い者だよ。てめえの勝手なイメージで失礼なことばっか言ってナメてんのはどっちだよふざけんな!!!
おい倉田っ、大丈夫か倉田!!具合悪いのか倉田…!!死ぬな倉田ァァ!!」



