私のこと愛しすぎだよ、結多くん。





「このみちゃん、いっしょに絵かこーよ」



そう言って、パレットと筆、絵の具、それからスケッチブックを取り出したクラスメイト。



「だめだよ結多くん。勝手にいじったら先生に怒られちゃう…、体育に行かないと」


「うわっ、やべえ出しすぎた。はい、どーぞ」


「……、」



心配する私をよそに、筆を手にした彼はもう1本の筆を私に持たせてくる。

ひとつのパレット。
結多くんの好みで広げられた色。



「じゃあ俺は森たち描くから、このみちゃんクマ描いてね。合わせて森のくまさんっつってな。……ふはっ、面白すぎて固まっちゃってるよこのみちゃん」



なにがあったの、を聞かない。
どうして泣いていたの、も聞かない。

ただ絵の具を手にして、笑顔で描いてゆくだけ。


つられたように描いてみよう。
つられたように笑ってみよう。


結多くんのせいだよって私が言ったとしても、きっと彼は笑ってくれるから。