別に、「悪口言うのやめよーぜ」と直接的に言っているわけではない。
ただ彼の言葉から、彼女たちの会話を聞いていたことだけは確か。
だから結果として、悪口はやめようぜ、と言っているのだ。
「でっ、でもさ、結多も真面目すぎると思わない?固いってか、だって自習の時間を自習として使うクラスなんかないって!」
「んーまあ、思うよなそれは」
「でしょ!?」
「だからこそ、自習した俺たちのクラス偉すぎ大優勝じゃん。優等生クラス、いえい」
ハイタッチのポーズ。
結多くんが右手を挙げると、つられた女の子たちが同じようにして合わせる。
ぱちんっと、いくつかの音が鳴った。
「じゃーね結多っ!また明日!」
「またね結多!」
「あっ、ルーコとツグミ。ついでにこのプリント職員室まで届けといてー」
「え~、もう。しっかたないなあー」
嫌な雰囲気にもさせない。
でも、これ以上言うのはやめておこうと、彼女たちに伝わっている。



