「……100…匹…?」
首をかしげる私たちの視線は、「この子たち」と爽やかに笑った人気者さんに釣られる。
「かわいーでしょ。丁寧に行列つくってお家に帰ってくの」
それは地面を這う蟻だった。
小さな蟻たちが1列を作って、コンクリートの隙間に入ってゆく。
「世界でいちばん大切にしてる俺の友達なんだ」
ニッと見せてくれた笑顔に、私たちがふたりして感じていた緊張がスウッと溶けていく音がした。
自分の靴のほうに歩いてきた1匹に「こら、あぶねえぞタケオミ」と、まさかの名前まで付けていると。
穂乃花ちゃんと私の小さく吹き出す音が混ざった。
「このみちゃんっ、すごく涼しいね……!」
「うんっ、たのしいね穂乃花ちゃん…!」
クラスの人気者さんは、私たち隅っこクラブに気などつかわせない完璧なフレンドリーさがあった。
これが結多くんのすごいところ。
なんだとしても、どんな場面だとしても、結果として楽しめるフィールドを作ってしまう。



