「や、やめよう…よ」
自分のこーいうところ、本当に嫌だ。
もっとお腹から声を出せばいいものを、聞こえない音量だと分かってて口に出すんだから。
言えばセーフ、じゃないよ私。
聞こえないと意味ないんだよ。
やめよう、仲良くしよう。
そんなことしたって誰も笑顔にならないよ。
───心のなかでしか言えない私が、大嫌い。
「えー、でもさあ。俺そのおかげで解けなかったとこ解けちゃったりして」
「っ!」
私の背後。
ふわりと優しい、お日さまみたいな風が吹き抜けたと思ったら。
女子生徒ふたりが戯れる教室へと、迷いなく踏み入れた男の子がひとり。
「ゆっ、結多…!」
「荒井がいなかったら、俺たちのクラス崩壊してね?委員長ってすげーんだよこのクラスのメシアだよ。
いつも俺たちが帰ったあと、全員の机揃えたりしてんの知ってた?」
「そ、そうなの…?」
「そーなの。レイワの学生のくせに格好良すぎね?さっすが学級委員長だよなあ」



