それは、いつかの美術室にて。
ふたりで描いた最高傑作───“森の可愛すぎるくまさん”だった。
ピカソだって相手にならないソレ。
このクマさんのどう見たってニンゲンのカオ具合がね、クセになるのなんのって。
「……ゆいた、くん……、パワー…」
火照った顔で眠りながらも、へらりと表情を崩したこのみちゃん。
細かく折られたA3画用紙。
折り目がハッキリと目立っているから、何度も開いては見て、また折ってを繰り返したんだろう。
つらいとき?
悲しいことがあったとき?
ねえ、こうやっていつも持ってたの?
「控えめすぎだろ…、ほんっと控えめ」
でもそれで幸せ感じちゃってんだから困るよ。
「こんなお守りみたいなことしなくたって……本人は常にこのみちゃんしか見てないってのに」
ふざけたかった、いつもの俺らしく。
ポケットに手ぇ突っ込むとか変態染みたことしてんだから、ふざけたかったよ。
無理。
さすがに今はそんなことできそうにない。



