「色も匂いも本に書いてある通りね。材料も工程も間違いないし、完成だわ!」
ギムレー宮のキッチンで
大汗をかきながら鍋をかき回していたフレイアは
笑顔でトゥーラを呼んだ。

「これがそうなんですね。ドロドロしていて苦そうです。」
「良薬は口に苦し、と言うでしょ。」
「これでみんなが元気になると良いですね。」
お喋りに興じつつも、
手を止めることなく
フレイアとトゥーラが完成した薬を
小瓶に分けていると、
ドタドタと何人もの足音が聞こえてきて、
扉がバンッ!と開け放たれた。
先頭にいるのは宰相ヴォルヴァだ。

「捕らえろ!現行犯逮捕だ!!」
言うが早いが、
フレイアとトゥーラは兵士に捕らえられ、
縄で拘束される。
「何をするのですか!離してください。」
拘束される理由がわからず、
フレイアが抵抗すると
ヴォルヴァが勝ち誇った笑みを浮かべる。

「このおぞましい液体が動かぬ証拠だ。やはりアスラウグから来たお前が元凶だったのだ。この魔女め。」
ヴォルヴァはそう吐き捨てるように言うと、
ドア付近に立っていた男の肩をポンポンと叩く。
「よく知らせてくれた、モージ。これでお前の父も救われるだろう。」
モージと呼ばれた男は
決してフレイアの方を見ることはなく、
ヴォルヴァに深々と頭を下げた。
あの男は確か、
ギムレー宮を警備する兵の1人だ。