もともと社交的ではないフレイアは、
晩餐会の席で楽しく社交できるはずもなく、
1人黙々と食事していた。
すると横からチラチラと
視線を送られていることに気づく。
恐る恐る横を見てみると、
ヴィーザルがテーブルの向こうを気にしている。

フレイアは最初、
オーディンとヘリヤ女王を気にしているのかと思った。
王太子という立場上、
外交の話をしたいのかもしれない。
「あの、王太子殿下。オーディン様に繋ぎましょうか?」
フレイアがそう声をかけると
ヴィーザルは慌てふためいて、
自分の食器に視線を落とす。
「いや、大丈夫だ。お気遣いありがとう。」
「そうですか。」
ヴィーザルに断られては、
フレイアは何もできない。
2人の間にしばらくの沈黙が流れた。

「あのさ。」
しばらくして、ヴィーザルがフレイアに声をかける。
「母上の隣にいる女性は誰だい?」
ヴィーザルの顔がほのかに紅い。
ヴィーザルはオーディンでもヘリヤ女王でもなく、
ヴァールを見ていたのだ。
「あの方はヴァール様と言って、オーディン様の、その・・・もう一人のお妃様です。」
「そうか、そうなんだ。」
それだけ言うと、ヴィーザルは沈黙した。
その後賓客と会話をしつつも、
ところどころでヴァールを
熱っぽい眼差しで見つめていることに
フレイアは気づいた。