私はなるべく人と出くわさないよう、人がいない道を選んで、ゆっくり歩いた。

チカチカと点滅する街路灯、遠くで聞こえる車のエンジン音、頭上でパチパチと音を立てる雨。

ズッと少し擦った足音も、湿り気を帯びながら暗闇に響く。




カンカンカンカンカン……


「!」




踏切の警告音が聞こえた時、私は顔を上げて、小走りで駆けた。

道路を渡った先の金網へと急いで近寄ると、ひし形の網目に手をかけて、線路の奥を眺める。


ピカッと、ライトが見えた。

それから10秒ほどで、電車は私の全身に風を浴びせて、線路の向こうへと走っていく。


完全にそれが遠のいてから、私は細めた目を開いて、線路の先を見た。

あっという間の出来事。

この瞬間的な衝撃が、いつも全てを吹き飛ばしてくれるようで、堪らなかった。