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6歳の時、私は病院に入院した。

幼かった私が病名を聞くことはなかったけど、それなりに大変な病を患ったらしい。

何しろその手術代を払う為に、父は借金をしたのだから。


運命の歯車というものが狂ったのは、間違いなくその時だ。

借金を返す為、働き詰めになった父は、ストレスからなんだろう、だんだんと荒れていった。

手術後、私の看病をしていた母は父と喧嘩することが増えて、借金返済の為に始めた仕事も、職場でトラブルがあったのか、辞めてしまった。


再就職は、簡単にはいかなかったらしい。



一度狂った歯車は、二度と元に戻ることはなかった。

平穏な家庭を壊したのは、他でもない私。

荒んだ父を、私を残して逃げた母を責めることはおろか、現状を辛いと思う権利すら、私には無い。