「雨、止まないね。花火大会、中止にならないといいな……」




ソファーから身を乗り出して、しとしとと雨が降り続く様子をガラス越しに眺める。

もっとよく見ようと体重を前にかければ、後ろから腕を回された。

傾いた体は同居人の肩にぶつかって、頭を預けるように止まる。


私は上目遣いに彼を見上げた。




「去年と同じだね」


「……あぁ」




伏し目気味に視線を合わせながら、口角は少しも上がらない。

そんなところも好き。


表面上は無愛想でも、彼が優しいことは身をもって知っているから。




「雨が止んだら、見に行くか?」




雨が止むことを信じて疑っていないような口振り。

私は黒い空に咲く大輪の花を想像して、頬が緩むのを自覚した。




「うんっ」