そんな経緯もあり、参堂に関しての日程調整を続けていたある日。
 今度は相手であるアルトナー伯爵本人からの手紙がもたらされる。

 同家の封蝋が押された書簡には、驚くべきことに以下のような文章が記されていた。

『──たとえ由緒ある神託だろうと、前途あるご令嬢の将来を、本人の意思を無視して勝手に決めてしまうこと、独善と言わざるを得ません。ましてやその相手が手前のような親子ほどの年齢差の男など。どうぞこのお話は、辞退されるようお願い申し上げます』

 また、それに続いてこのようにも書いてあった。

『国教会との関係につきご懸念あるなら、たとえば当家が強く拒んだと、こちらに責をすべて負わせてしまって構いません。なにとぞ、一時のためらいにてご息女の未来を潰してしまわぬよう、ご当主殿には熟慮願います』