巫女の威光にひれ伏したのは国教会だけではなかった。
 神託を信じ、招集に従う民もかなりの数に上っていた。

 しかし、その中でマルガレタは彼らの求めを頑として拒絶した。

 というのも、結婚の相手として手紙に書かれていたのは、同じく伯爵家出身のウーヴェ・アルトナー。

 そのアルトナー伯爵は、四十間近の中年男性だったからである。

 マルガレタの年齢は十七。花も恥じらう、いわゆる年頃のご令嬢だ。
 本来ならもっと歳の近い令息やら騎士やらが、お似合いというべきであろう。

 そんな彼女が二十以上も年の離れた中年に、何故嫁がなければならないのか。
 何の権限があって、神託の巫女はその男をあてがおうとするのか。
 マルガレタは怒りの炎を大きく燃やした。