「ウーヴェ・アルトナー伯爵よ。何ゆえ貴公はそれほどまでにシュミット家のご令嬢との婚姻を拒むのかね」

 アルトナーは下らないとばかりに鼻を鳴らした。

「私と彼女の間には、何の関係も存在しないからです。当然、当家と彼女の家の間にも、しがらみはない。言わずもがな、当たり前のことでしょう?」

「だが、巫女殿によれば、貴公ら二人は結ばれるべきとの天啓があったのだぞ。この神託に誤りがないのは、今までの事例を見ても明らかなこと。特にアルトナー伯爵、貴公の年齢ではもはやまともな結婚は望めまい。このような若い婦女子との婚姻、最後のチャンスとは思わんのかね」

 「……それは俺だけじゃなく彼女への侮辱にもあたるぞ」と、低い声でアルトナーは言った。

 その迫力に大司教はたじろぐ。
 老体は咳払いをして「失礼」と言い、「とにかく、巫女殿の神託は絶対である。これに逆らって不幸な結末が起ころうとも、我らは何の責任も取れないぞ」と返した。