一人で勝手にハラハラしているあたしをよそに…… 彼は気を取り直したかのように、フロントに向かって歩き始めた。 キャンセル……だよね、やっぱり。 耳を大きくしてフロントの方に傾け、彼の話を盗み聞きする態勢に入るあたし。 「すみません、今日予約していた折本です」 はじめて聞いた、彼の低くて通る声。 その声に、あたしの胸はさらにドキドキする。 ――やっぱり、かっこいいなぁ……。