「あ、あのっ、よろしければ、こちらで召し上がっていかれませんか? 紅茶もお出ししますので!」

 はい、馬鹿です。
 大馬鹿な女が一人ここにおりました。
 今思えば、ほんと何考えてるんだって感じですよね。
 イートインスペースもないお店。出会って間もない殿方に、よく考えないまま引き留めてしまって。

 でも、私は騎士さんに食べて欲しかったんです。
 できることなら気兼ねしない空間で、じっくり味わってほしかったんです。
 美味しいものを食べるのに、男とか女とか関係ないでしょう?

 いえ、自分の焼いたケーキがそんなに美味しいのかとか、店内が気兼ねしない空間かと言われると、自信ないですけど。

 ですけどね。それでも騎士さん、言って下さったんですよ。
 にっこり笑って、優しい表情で。

「それじゃあ、お言葉に甘えてしまってもいいかな」って。