「どっ、どうですかっ! 今回はこちらの、なばっ、生チョコケーキなどお試しになっては!」

 ……噛みました。
 思いっきり、噛みました。

 この前いらっしゃった日から考えて、そろそろお越しになられるかなーと勝手に楽しみにしていたんですけど、どうやら私、自分で思う以上に意識しちゃってたみたいです。

 閉店ギリギリの時間帯、騎士さんは予想通りいらしてくださったんですけど。
 いやもう……絶対引かれたと思います。

 でも、クッキーだけじゃなくて、他のも食べていただきたかったんです。
 売上ナンバーワンで自信作なんですよ、この生チョコケーキ。
 こういう飾り気のないチョコレートケーキなら、男の方でもイケると思いましたし。

 騎士さんは一瞬きょとんとした顔をして、それからくくっとお笑いになられました。

 恥ずかしい!
 恥ずかしすぎて死にたいくらいでしたが、逆にあちらは和んでくださったらしく、その笑顔のまま、

「じゃあ、それをいただこうかな」

 と、おっしゃってくださいました。