「……すまない。またクッキーをいただけるだろうか」

 何日か後、閉店間際にその騎士さんが再びいらっしゃったんです。

「かしこまりました。一箱分、お包みすればよろしいでしょうか?」

「あ、いや。それはさすがに多いから……今度は、一袋分で頼む」

 騎士さんはこの日、ちょっと顔を赤くしておっしゃいました。
 ちなみに、クッキーは三袋でちょうど一箱分です。
 このサイズ、たとえば家族へのお土産なら、一袋分がちょうどいい量なのですけど、だとすると今回は贈呈用ではなさそうで。
 
 飾り紙はいいのかしらという思考が顔に出てしまったのでしょうね、騎士さんは私を見て慌てたように言いました。

「あ、こ、これは自分でいただこうかと思ってね……。この前、少しだけ俺も食べてみたんだが、とても旨かった。
 だから、その……これは自分用なんだ」

 あ、そういうことだったんですね。と、私は心の中で手を叩きます。

「どうもありがとうございます。それでは630タラントになります」

「……どうも」

 騎士さんに袋を渡してお金を受け取って。
 褒めていただいてほくほく気分で、その日は仕事を終えたんですけど。