「もしかして誘ってる?」


「え?」


「もう昨日のこと忘れちゃった?俺と桜、付き合ってるんだけど」


 そう言われたかと思うと、柊は私の首元に顔を埋め、ちゅっと音を立ててキスをした。


 何をされたか自覚した途端、全身の体温が沸騰するくらいに上昇した。


「ぎゃー!!」と叫びながら飛び退ると、私は柊から距離を取って、ファイティングポーズで牽制した。


「なな、なにするの!」


 混乱する頭で柊に文句をぶつけると、柊はやっぱりいつも通りに返答してくる。


「何って。ただ首元にキスしただけだろ」


「き、き、キス!?」


「付き合ってるんだから、キスくらい普通だろ?もっとすごいことだってするだろうし」


「!!??!」


 な、何を淡々と話しているのだろうか。混乱しすぎて頭の理解が追い付かない。


「昨日の告白冗談じゃなかったの!?」


 やっとの思いでそう口にすると、柊は「ああ、」と腑に落ちたような表情を見せた。


「なるほど、冗談だと思われてたのか」


「思うでしょ!?ずっと幼なじみで、そんな素振り一度も見せてこなかったじゃん!」


 ふむ、と柊はもう一度頷くと、ゆっくりと私に近寄ってきた。


 また何かされるのではないかと思い、私は少し身構える。かと言って、柊相手に逃げ腰なのもなんだか悔しい。


「な、なに」


 少し睨みつけながら柊を見ていると、彼は私を優しく抱きしめた。