「女の子一人残すのは不安だ~って、如月さんに零したら、柊くん泊まってくれるって言うものだから、お言葉に甘えてお願いしちゃった」
「あ、そうなんだ」
柊とはお互いの家を行ったり来たりしている仲なので、それほど驚くということもない。両親同士も仲が良く、交流は絶えない。おそらく柊ママにでも話していたのだろう。
「お邪魔します」
柊はさっさとうちに上がり込むと、リビングに入っていく。
「じゃあ、お母さん行ってくるから」
「あ、うん。いってらっしゃい」
母はそそくさと身支度を整えると、慌ただしく出掛けて行ってしまった。
玄関に一人取り残された私は、ふと考える。
母よ、いいのか?柊と一晩一緒なんだよ?私達、年頃の男女よ?なにか間違いが起きてしまったら、とか心配ではないのか?一人娘よ?
高校生になってからはさすがに泊まることはなくなって、もちろん変わらずにお互いの家の行き来はあるけれど、一晩二人きりになるなんてことはなかった。
とは言え、私と柊だ。なにかあるはずもない。昨日のことだって、どこまで本気だったのか分からないし。
「さて!私も買ってきた本読もーっと」
細かいことは気にしないのが、私のモットーである。



