「あ、そうだ。昨日も言いたかったんだけど。桜、のぼせて倒れちゃったから言えなくて」と柊は少し困ったように私の部屋着を指差した。
「なに?これ?チェラピケの部屋着?」
上はもこもこのプルオーバー、下は同じようにもこもこのショートパンツである。
「その、パンツ短すぎないか?目のやり場に困るんだけど」
「え…」
柊はそう言うと視線を外して、少し頬を赤らめた。
「無防備すぎるんだよ、だからその、すぐ桜に触りたくなる」
頬が一気に熱を帯びるのが分かる。私は早口で捲し立てた。
「ジャージの長ズボンに履き替えてきます!」
「うん、そうしてくれると助かる」
私が慌ててダイニングテーブルから立ち上がり、自室に向かおうとすると、後ろから腕を掴まれた。
「あと、」と言って、柊は言葉を続ける。
「俺、桜が思ってるより多分嫉妬深いよ」
「え?」
「今日三浦と仲良さそうに話してただろ。ああいうの、好きじゃないっていうか、桜は俺とだけ楽しく話してたらいいのにって思う」
「あの、気を付けます…」
「うん、そうして」
「よし、ちゃんと伝えられた」、とまたマイペースに呟く柊は、どこまでいってもやっぱりいつもの柊で、私の知っている大好きな柊だった。
赤くなった顔を見られたくなくて、「着替えてくるね」と自室に入る。
嬉しい、嬉しくて頬が緩んでしまう。
柊がどれほど私を好きで、どれほど私を大事にしてくれているのか、痛いほどよくわかった。柊はマイペースなところはあるけれど、伝えることはしっかりと伝えてくれる。
私もそうでありたい。大切にしてくれる柊を、これからも大切にしたいと思う。
心がぽかぽかと、温かいもので満ちていくのを感じた。



