「ごちそうさま」
「はい、お粗末様」
柊が食べ終わったのを見て、私はおずおずと切り出す。
「あの、天文部の活動よかったの…?今日、なんとか流星群観測するとか言ってなかったっけ?」
「オリオン座流星群な。別に学校の屋上で観なくても、ベランダから観られると思うから、後で観測する」
「そう…」
えっと、そのぉと、私は少しもごもごしながら続ける。
「わざわざ私のために帰ってきてくれたんだよね?あの、ありがとう…、ちょっと心細かったから、嬉しかったよ」
正直、父も母もどちらともいないということがなかったので、一人で過ごすのは心細かった。柊が来てくれて酷く安堵したのだ。
柊は面食らったような表情をしていたが、その表情はみるみるうちに破顔した。
「そうか、よかった。本当は急に押しかけてしまったから、迷惑だったんじゃないかって思ってた」
「迷惑なわけないよ!柊といると楽しいし、安心する!…それに、」
ドキドキもするのだ。今まで意識してこなかっただけで、私はきっと、とっくに柊のことが好きだったのだ。柊に言われてやっと気が付くなんて、確かに鈍いのかもしれないけれど。柊が私を想ってくれる気持ちがすごく嬉しいし、私も柊が大切だと伝えたい。
「それに?」
照れてその先を言えなくなってしまった言葉の続きを、待ってくれている柊。私が話すまで、きっとずっと待っていてくれる。私はいつもより早い鼓動を感じながら言葉を紡ぐ。
「私、柊のこと好きだと思う!その、好きって言ってくれたことも、付き合おうって言ってくれたこともすごく嬉しかった!」
恋人繋ぎもドキドキしたし、抱きしめられるのも全然嫌じゃなくて、むしろすごく嬉しかったのだ。
「あの!私は恋愛経験全くないし、めちゃめちゃ不束な彼女で、柊が抱いている彼女像がどんなものかも分からないけど、精一杯頑張るので!その、これからも末永く何卒よろしくお願い申し上げます!」
一生懸命伝えた気持ちを、彼はどう思っただろうか。こっそり柊の顔を見ると、柊は「ふはっ」と噴き出して、私の頭を優しく撫でた。
「末永くって、プロポーズみたいだな」
「プロっ!?」
「ありがとう桜。俺も桜のことすげー好き。桜は桜のままでいいんだ。その、付き合えて嬉しかったから、俺もちょっとやりすぎたというか、照れる桜が可愛すぎてついからかい過ぎたというか…」
「かわ!?」
「悪かったよ、俺も慌てすぎてた。これからは桜のペースに合わせてゆっくり、二人で幼なじみから恋人になっていこう」
「うん!」



