翌日、朝ごはんを一緒に食べ、いつも通りに一緒に学校へ向かった。
「桜、なんでそんな距離取って歩いてんの?」
そう柊に声を掛けられたが、それもそのはずである。私はまだ柊を警戒している。いつもなら隣に並んで歩いているのだが、今日は五歩くらい後ろを歩いている。
「だってまたなにかされるかもしれないし!」
「なにかって?」
分かっていて聞いてきているのだろう、薄っすら笑っているのが隠しきれていない。からかっているな、柊のくせに。
「えっちなこと!してくる気なんでしょ!」
「例えば?」
「例えば、って…」
私が昨日のことを思い出して赤くなっている間に、柊は私の手を取った。
「べ、別に手を繋ぐことくらい、なんともないんだからね!」
小さい頃だって繋いでいたのだ、今更ドキドキなんてしないぞ!と高を括っていると、柊は握っていた手を少し緩めると、今後はぎゅっと指を絡めてきた。俗に言う恋人繋ぎになってしまう。
「ひ、」
「これはえっちなことに入る?」
繋がれた手が、どんどん熱くなるのを感じる。柊はまたからかうように笑った。
こんな風に手を繋いだことなんてない。なにこれ、普通に手を繋ぐのとそんなに変わらないはずなのに、どうしてこんなに恥ずかしいんだろう。
柊は余裕そうに私を見て、楽しんでいるようだった。手を少し動かして、私の手をゆっくりと触る。
「~~~っ!!」
恥ずかしさでパンクしそうになった私は、慌てて彼の手を振りほどいた。
「これはえっちに入るっ!」
そう言い捨てて、柊を置いて学校へと走った。
なにこれなにこれ!なんでこんなに恥ずかしいの!
ただ繋ぎ方を変えただけで、何故こうもやらしいと思ってしまうのか。
私の心臓はまたうるさいくらいに高鳴っていて、早く脈打ち過ぎて死ぬかもしれないと思った。



