「ねえ」と言うと柊は、スプーンを握っている私の手を取った。
「さっきの質問、答えてくれないの?」
柊に触れられた手が熱くて何も考えられなくなる。
「し、質問?」
ようやく絞り出した声も、か細くてなってしまった。
柊は薄っすら笑うと私の瞳をじっと見つめる。
「桜は俺のこと、どう思ってる?」
「どうって…」
考えたこともなかった。きっとずっと大人になっても、私達の関係は変わらなくて、幼なじみのまま、そのうちそれぞれがそれぞれの好きな人と歩んでいくのだと思っていた。
柊は真剣に自分の気持ちを伝えてくれたのに、私はまだその答えをもっていない。
私が黙ってしまったのをどう思ったのか、柊は握っていた私の手を持ち上げると、そのままカレーをぱくっと自分の口に運んだ。
「あー!私のカレー!」
「ん、うまい」
「もう自分の食べてよね」
私が文句を言いながら、このスプーン間接キスに入るのでは…などとまた呑気なことを思っていると、柊の真剣な声がして顔を上げた。
「ちゃんと考えてみてよ、俺のこと」
「え、」
「幼なじみとしてじゃなくて、男として、ね」
「あ、うん…」
今日はなんだか柊のペースに呑まれてばっかりだ。
「ごちそうさま。皿、俺が洗うから」
「あ、ありがとう…」
私はどうしていいのかわからないままふらふらと立ち上がる。
「先にお風呂入るね」
「ん」
洗い物をする柊の背中にそう声を掛けて、私は浴室へと向かった。



