【短】この瞬間‐おと‐だけは、僕のものだから。



日直で遅くなった帰り道。

急いだほうがいいかなと少し足を速める。

視線を上げた先に今朝ぶりに見る背中がちらついた。


え……あれ、ウイ……?

……えっ、あ……見失っちゃった……。

あっちって、繁華街のほうだよね……。





「———……」











「また遅くなっちゃったよぉ……」





日直ではなく。

頼まれごとで遅くなったわたし。

この間よりも遅くなってる。

ここらへんで、昨日、ウイを見かけたんだっけ……。

視線をめぐらす。

っ、いた……っ。


早く帰らなきゃ、なのに。





「———!」






その寂しそうで。

淋しそうで。

そんな背中で。


一体、どこに行くの———?


わたしは、繁華街のほうへ駆け出した。