「ないのー?ありそうだけど」
「残念ながら何も話すことないよぉ……」
「えぇー、でもありそうじゃんっ。———ホントにないの?」
▼*▼
『——……ギター?』
そう言いながら近寄ってきたのは、わたしの幼馴染・異露木 初斗。
ここ、屋上で、しかも授業中なんだけど。
『さぼり?』
『奏心もでしょ』
『……』
……こいつ、口だけは相変わらずよく回る。
じとりとにらんでいると、ウイが聞いてきた。
『そんなに大切なもの?』
『当たり前でしょ』
ギターを持ち直す。
風が吹き抜けた。
『これは、わたしの“おと”だから』
『ふぅん?』
あまり変えずにいた顔を、ふわりと緩める。
『これは、わたしのためだけの“おと”だから』
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