センター試験の会場は、高校ごとに割り振られるから当然2人とも一緒の会場だ。
駅のホームで待ち合わせしてた3人は、お互いの顔を見て気合を入れる。
「後はやるだけだよっ」
「うん」
「お互い頑張ろうね!」
「うん!」
卒業したら別々の道を歩むけれど、たぶんこの2人とはこの先もずっと一緒にいられると思う。
趣味も特技も全然違うけど、三者三様で居心地がいい。
合格祈願でお揃いで勝ったお守り。
それぞれに鞄に着けている。
*
試験会場は白修館高校から二駅先の某大学。
駅から程近く、同じ電車から降りて来た制服姿の他校生が結構いる。
「あっ、中島先生だ」
引率の先生のようで、国語教諭の中島 みどりが校門の前に立っていた。
出席名簿のようなものを手にして、試験を受ける生徒をチェックしている。
「北島さん、香椎さん、天野さん、最後まで諦めずにね」
「「「はい」」」
次々と正門をくぐる受験生。
彼ら全員がライバルだ。
「トイレ寄ってこ?」
「私も行っとくっ」
「何、二人して緊張してんの?」
「雫は緊張しないの?!」
「ここまで来たら、やるしかないじゃない」
「そりゃそうなんだけど~」
「ホント、雫はブレないな~」
恋愛に事関しては全然ダメだけど。
勉強も運動も、緊張したことは殆どない。
初めて模試を受けた時だって、楽しいと思えるくらいだった。
「雫の度胸、マジで欲しいわぁ…」
「私はさっちゃんの色気が欲しいけどね」
「っん、もうっ!」
冗談だと取ったさっちゃんは、緊張が解れたみたい。
強張った顔が柔らんだように見える。
冗談じゃないんだけどね。