新年を迎えて、あっという間に大学入学共通テストの当日を迎えた。

「雫、忘れ物ない?」
「うん、何度も確認したから大丈夫」
「ベストを尽くせばいいんだからね!」
「分かってるって」

うちの親は昔から『頑張って』とは殆ど言わない。
何でも器用にこなしてきたというのもあるけれど。
親なりに気を遣って言ってくれているのは分かる。

一人娘に気負わせないための励ましの言葉。
結果に囚われず、今ある力を出し切れればそれでいいと。

両親に見送られ、自宅を後にした。



駅の改札口を抜けた先に、彼がいた。
朝一番で励ましメールを貰ってたのに。
いつもより1時間くらい早い時間帯なのに。

「どうしたの?」
「先輩の顔見て、送り出したかったんで」
「……ありがと」

クリスマスに彼に気持ちを伝えてから、二人の関係が物凄く進展したというわけじゃない。
そりゃあ、キスはしたけれど。
あの日はちゃんと……?
キス止まりで過ごした。

無事に受験が終わるまで。
無事に志望校の合格通知が貰えるまでは、しっかりと一線は守ってくれると約束してくれた彼。

年末年始に何度か、ジョギング中だと言いながら、自宅に顔を見せに来てくれたけど。
別にそれ以外は初詣に合格祈願に行ったくらいだ。

「先輩なら大丈夫っすよ」

にかっと向ける笑顔が眩しくて。
元旦に初日の出を拝めたくらい縁起がいいと思えてくる。

「行って来るね」
「ファイトっす!」
「うん」

沿線が違うからその場で彼と別れた。

普段使わないホーム。
スマホの時計と睨めっこしていると、ちーちゃんとさっちゃんが一緒に現れた。

「おはよ、雫」
「おはよ~、ちーちゃん、さっちゃん」
「雫、早いね」