脳みそまで筋肉でできてる風に見られがちだが、幼い頃は空手でさえ成績を残せるほど強くなかった。
だから、せめて勉強だけはと思い、勉強する習慣が身についているというのもある。

基本、部屋に引き籠り系の部類の所属している虎太郎は、朋希からの誘いがなければ自室に籠るような性格。
漫画やゲームを延々とするような、見た目とはかなりのギャップがある。

雫先輩のシャーペンを持つ手に見惚れていると、『ん?』と先輩が顔を傾げた。
俺があなたをずっと忘れずにいれたのは、その右手にあるんですよ。


先輩の右手の親指の付け根部分に『∴』の記号のようなほくろがある。
初めてメダルリボンを貰った日に見た記憶が鮮明すぎて、ずっと忘れずにいた。

そして、再会したあの日。
空手少女からすっかり女性らしくなった先輩。
声や仕草だとか、そういうものでびびっと来たんじゃない。

俺の視界に映った、あなたの右手にあるそのほくろが、俺にあの日の記憶を呼び覚まさせたんです。

「雫」
「ん?」
「少しは構ってあげないと、臍曲げるよ?」
「ッ?!」
「北島先輩、ご心配には及びません。俺、勉強してる先輩も好きなんで」
「やっだぁぁぁ。惚気全開で、覚えた数学の公式ぶっ飛んだじゃないっ」
「あ、すんません」
「いいけどね~別に」

俺の言葉に赤面する先輩が可愛い。
ペットボトルの蓋を開けてあげると、ますます顔を真っ赤にして。
手団扇で必死にクールダウンしてる。

本当に、全小で三連覇した人とは思えない。