猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない


 アリアナがフリードリヒをかばって、後頭部に傷ができた日のように。
 その傷のせいで皮膚が引きつれ、顔――特に目元が、ゆがんでしまった時のように。

 フリードリヒの制服をきゅ、とつかんで震えるアリアナは、気づかなかった。
 フリードリヒが、アリアナを、いとおしくてたまらない、という目で――それも、ひどい執着心のこもった目で、見つめていたことを。
 アリアナを逃がさぬとでもいうように、その手に力がこもったことを。