猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない


 ――と、フリードリヒの顔がふいにそらされる。
 アリアナが、ああ、まただわ、と傷心して目を伏せた。最近のフリードリヒはいつもこうやってアリアナから目を逸らす。そんなにアリアナを疎ましく思っているのなら、守る必要なんてないのに。
 そう思った時だった。

「アリアナ、そんな目をしないでほしい。そんな可愛い顔をされてしまうと、僕はどうにかなってしまいそうになるんだ。ただでさえ君は最近大人びてきて、きれいになっているのに」

 ――ん?
 周囲の心がひとつになった。
 もちろん、アリアナもそのひとりだ。
 風向きがおかしいわ?とアリアナは目をぱちくりさせる。