猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない


 青年――フリードリヒ。
 彼は、まるでアリアナを守るようにして女生徒たちに言ってのける。
 どうしてアリアナを守るのだろう。アリアナはフリードリヒにすでに見限られているはずだ。
 ……女生徒たちはなにも言えないようだった。だってそうだ。王太子に申し開きーー口答えができる人間なんて、この学園にはいない。
 周囲にざわめきが大きく広がって、そこでアリアナは、ここが人目のある中庭だということを思い出した。

「ふ、フリードリヒ様」
「なんだい?アリアナ」
「そ、その方たちは、べつに」
「君に手をあげる人間をかばうの。ふーん……」

 女生徒たちが戸惑うようにアリアナとフリードリヒを見ている。
 アリアナは混乱して、あわあわと顔を赤くしてフリードリヒを見つめた。