猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない



 悪口という素行不良を繰り返すアリアナに怒っているのか、真っ赤な顔をしてアリアナから目をそらしたフリードリヒを想う。
 アリアナは、もうすっかりフリードリヒから見限られてしまったに違いなく、また、数日後に行われる卒業式で、ミリナへのいじめを公表され、婚約破棄をされてしまうはずなのだ。
 だってゲームではそうだった。

 ミリナが誰を選ぼうとも、アリアナの行く道は破滅だ。
 アリアナは、自分を囲んでにらむ女生徒たちに、あきらめたように笑って見せた。

「この期に及んで余裕の笑みですか」
「本当に、自分が悪いなんて思っていないんですね」
「そんなことないわ」

(わたくし、本当におばかさんなんだわ。わたくしが笑ったところで全部悪い意味にとられてしまうのに、それでも諦められないでいる)

 アリアナは、力なく垂れた燃えるような赤毛をふるふると振って、じっと女生徒たちの目を見返した。
 そうしたところで、誤解が解けるはずはないのだけれど。

「こ、の――!」
「私たちを、バカにしているんですか!」

 女生徒のひとりが、アリアナを突き飛ばそうとして、その手を前に出した、その時だった。