猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない


 後悔はしていない。
 今同じことがあっても、アリアナは一瞬たりとも迷わずフリードリヒを守るべくこの身をさらせるだろう。
 ただ、その結果器量を損ねたこの顔を、フリードリヒが好むだろうか、というのはまた別の話だ。
 それは、今アリアナの目の前にいる、数人の女生徒たちも口々に話していることだった。

「アリアナ様、あなたはフリードリヒ王太子殿下にふさわしくない、それはご存じですね?」
「この三年間、ミリナさん――いいえ、もう次期公爵夫人ですね、ミリナ様をいじめていたこと、知らないとでもいうと思いますか?」
「いいえ」

 アリアナは静かに言った。
 記憶を取り戻してから三年。もうすぐ卒業、そろそろ断罪の日ね、というとき、アリアナは特に親しい間柄ではない女子生徒たちに昼食の場にしている中庭で囲まれた。
 おかしい、ミリナをいじめていたことに対する断罪は、卒業式の日だ。