○心菜の家・1階リビング(夕食後)
3人掛けのソファで、真ん中に人ひとり分のスペースを空けて座るふたり。
心菜「わぁ、美味しそう」
シュークリームを見て目を輝かせる心菜。
颯真「心菜、昔からこの店のシュークリーム好きだもんな」
心菜(颯真くん、覚えててくれたんだ)
心菜「いただきまーす。やばい、めっちゃ美味しい」
幸せそうにシュークリームを頬張る心菜に、颯真は目を細める。
颯真「あ。心菜、口の横にクリームついてるよ」
心菜「えっ、どこ?」
心菜が自分でクリームを取ろうとするも、なかなか取れない。
颯真「違う。そこじゃなくて……」
颯真の指が心菜のほうへと伸びてくる。
颯真「ここだよ」
顔を覗き込まれながら、すっと颯真の長い指に口の端を拭われ、心菜の心臓が波打つ。
そして颯真は、取ったクリームをペロリと舐めた。
颯真「んー、甘い」
心菜「そっ、颯真くん!!」
颯真「でもこっちのほうが、クリームよりもっと甘そうだけど」
颯真の手が、心菜の頬に触れる。
心菜「え?」
人ひとり分空いていたはずのソファのスペースは、颯真に詰め寄られていつの間にかなくなっていた。
心菜(え、颯真くんとの距離めっちゃ近いんだけど)
颯真の顔が少しずつ迫り、ついには鼻先が触れそうなくらい二人の顔が近づく。
心菜(えっ、なに!? こんなにも顔が近づいて、この流れはもしかして……キスされる!?)
ドキドキする心菜が、咄嗟に目をギュッと閉じたとき。
心菜のおでこに、颯真のおでこがコツンと当たった。
心菜「……え?」
一瞬何が起きたのか分からず、目をパチパチさせる心菜。
颯真「え、って心菜。もしかして何か期待してた?」
心菜「き、期待って……!」
かああっと顔が真っ赤になる心菜。
そんな心菜を横目に、颯真がソファから立ち上がる。
颯真「あー、食った食った。風呂でも入るかぁ。あ、そうだ心菜」
心菜「……なに?」
颯真「もしさっきのが不満だったのなら、俺と一緒に風呂入る?」
心菜「はっ、入りません! 颯真くん、からかわないで!」
颯真「はははっ」
心菜(もう! 私だけ変にドキドキしてバカみたい)