「最近一緒に過ごせる時間が少ないんだもの」
「そんなことはな……」
 否定しようとしたみたいだったけれど、思うところがあったのだろう。反論できないネル君が困ったというように頬を掻くので、私はここぞとばかりに訴えた。

「お願いネル君。少しの間だけでいいからこうさせて」
 懇願するように私はさらにネル君を抱き締める腕に力を込める。
 ややあってから、全身の力を緩めたネル君が私に身を預けると溜め息を吐いた。
「……本当に困ったお嬢様です。今回だけですからね?」
「うん! ありがとうネル君」
 私が満面の笑みでお礼を言うと、ラナがくすくすと笑い出した。

「ふふっ。ネル君ったらお顔が真っ赤ですよう」
「ラナさん、冷やかさないで!」
 私の方からはネル君の表情は見えないけれど、耳の先まで赤く染まっているのだから同じように顔も真っ赤になっているはずだ。
 その反応が堪らなく可愛くて私はさらにぎゅうっとネル君を抱き締める。そしてネル君の頭の上に顎を置いて全身で幸せを噛みしめるのだった。