没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~



「万が一、例の物がメルゼス国の外に出てしまえば我が国は破滅に向かうだろう。だから一刻も早く見つけ出して欲しいのだ」
「もしもそうなったら島長が速やかに行動します。動き出さないということはまだそれが国内に留まっていることを意味するので心配いりません」


 メルゼス国の初代国王との約束で例の物が国外に持ち出された場合はただちにこちらが対処することになっている。そうなれば島長から一報が入るだろう。
「アル殿、どうか陛下の心が安まるよう引き続き力をお貸してください」
 宰相は滅入っている国王陛下をこれ以上見ていられないといった様子で、沈痛な声で訴えてくる。国の存亡が掛かっているのだから当然だ。


 アルとて理解はしているし、意地悪でこんなことをしているのではなかった。何もできない自分がもどかしいと感じている。だが、それを二人へ口にしたところでどうにもならない。
 アルは拳に力を込めると強い眼差しを二人に向けた。

「私の目的が果たせた暁には、必ず力を貸します。だからもう少しだけ時間をください」
 宰相は何かを言おうとして口を開いたものの、最終的には口を閉じて頷いた。
「よろしく頼みます。……陛下、今日はもうお休みになりましょう。侍従長に頼んで濃いめのお茶を淹れてもらいます」

 宥めるよな声音で宰相が言うと、国王陛下は「分かった」と擦れるような声で返事をして部屋から出ていく。

 アルは申し訳なさそうに眉を下げると一礼をして二人を見送った。