それから毎日、ネル君はパティスリーに働きに来てくれた。
ネル君の歳で労働をするのは違法になってしまうので、彼にはお手伝いという名目でお昼を過ぎてからの二時間だけ、お店を手伝ってもらっている。
ネル君の存在は絶大で、連日多くのお客様が可愛いネル君目当てでやって来ている。彼の一挙手一投足にお客様はメロメロで、全員が頬を緩めていた。
完全にうちのアイドル――看板息子だ。
ネル君の方も話術に長けていて、彼が話しかけたお客様は必ずと言っていいほど商品を買って帰ってくれる。
適当に商品を案内しているわけではなく、お客様がどんなものを求めているのかしっかり話を聞いた上で提案してくれているようで、それを目の当たりにした時は舌を巻いてしまったし、普通の家の子ではないと思った。
けれど、どこに住んでいて何をしているのか、ご両親や兄妹はいるのかを訊こうとしても上手い具合にはぐらかされてしまう。
プライベートに関しては深入りして欲しくないようだ。
初めて夜の森で会った時のことを考えるとご両親はあまりネル君に関心がないのかもしれないし、訳ありなのは確かだ。ネル君を困らせないためにもプライベートの質問は一切しないでおこうとラナと二人で話し合ってから決めた。
「お嬢様、今日はこれで上がらせてもらいます」
数組の接客が終わって上がる時間になったネル君が厨房へと入ってくる。
「お疲れ様。今ならいろんなお菓子が揃っているから好きなのを持って帰ってね」
ネル君はできたてのお菓子が好みのようで、いつも作業台に並んだばかりのお菓子を報酬として持って帰る。
今日選んだのはころんと可愛いマカロン。
最近首都ではカラフルでぽってりとしたフォルムのマカロンが人気になり始めている。



