「えっ? ネ、ネル君!?」

 中心にいたのは、なんとネル君だった。しかも売り子として試食品のフィナンシェの説明をしてくれている。
「フィナンシェの味はプレーンとココア、ストロベリーの三種類を展開していて、形はウサギさん、リスさん、ハリネズミさんがあります。全部一緒のお顔じゃなくてよく見ると一つ一つに個性があるの」

 少し舌っ足らずだけど一生懸命に商品を説明するネル君の姿はずっと説明を聞いていたくなるような魅力がある。


 女性客と同じように声が高い調子で私も「可愛い」と呟いてしまった。
 ネル君の宣伝の甲斐あってフィナンシェは飛ぶように売れた。その後も彼が説明してくれたお菓子は次々と売れていき、嬉しいことに開店二日目も閉店時刻より早くにお店を閉めることができた。

 ――二日連続で早くお店を閉めることができた。周りには私のパティスリーが人気なお店だっていう印象を植え付けられたかも。

 お店を軌道に乗せることができれば侯爵家に頼らずに暮らしていけるし、借金返済の足しにすることだってできる。このままお店が順調に成長していくことを願うばかりだ。
 そして昨日と今日の一番の功労者はネル君だ。