没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~



「本当ですか? 実はここにあるお菓子はすべてキュール公爵令嬢自ら作ったお菓子なんですよ」
「ここにあるもの全部ですって? てっきりキュール令嬢は考案しただけで屋敷のパティシエに作らせているとばかり思っていましてよ」
「それは違いますよう。ここにあるケーキも焼き菓子もすべてお嬢様自らがお作りになったものです。買ってくださる方が幸せな気持ちになることを願って、原材料や焼き方にもこだわり、何度も試行錯誤を重ねておられました。今日だって夜明け前から作業に入られてましたよ」

 ラナがネル君の説明に補足を入れると、ジャクリーン様は目を丸くしてひどく驚いている様子だった。やがて、真顔になったジャクリーン様は扇を畳んで静かに言った。


「……厨房にキュール令嬢がいらっしゃるのなら今すぐに呼んでちょうだい。酷いことを言ってしまったお詫びをあなたとキュール令嬢の二人にしたいわ。それと、そこのショーケースにあるケーキをすべて頂きます。この可愛いウサギさんのフィナンシェも。可能かしら?」
「はいっ。かしこまりました。少々お待ちくださいませ!」

 ラナはにっこりと微笑むと、息を弾ませながら厨房へとやって来るのだった。