突然のキスに驚いた私はまごつきながらも話しかける。
 するといつにも増して弱々しい声が返ってきた。

「……前にも言いましたけど、僕にとってお嬢様は僕の行く道を照らす太陽。だから、僕だけを照らして欲しい」
 今度は私の手を頬に引き寄せるとすりすりと頬ずりしてくる。続いてネル君はゆっくりと顔を上げて私を見上げてきた。

 その表情を見た私はハッと息を呑む。夜空の星々を閉じ込めたかのような紺青色の瞳。ずっと見ていたくなるような美しい瞳に、私は吸い込まれそうになった。


「これは僕の我が儘だってことは分かってます。だけど……誰のものにもならないで」
 痛切な声が頭の奥にまで響いたかと思うと、脳裏にアル様の姿が浮かんでくる。

 ネル君の紺青色の瞳を眺めていたせいだろうか。アル様と同じ色の瞳に見つめられたせいでアル様の姿が頭から離れない。
 それを消し去るように目を閉じてから再び瞼を開くと、いつもとは違う精悍な顔つきのネル君が視界に映る。
 その瞬間、私の心臓がドドドッと激しく脈打った。あまりの激しさに驚いてしまった私は咄嗟にネル君に掴まれていない方の左手で胸の上の服をぎゅっと掴む。