身体の疼きが収まったネルは自分が来ている服に視線を落とすと生地を引っ張る。
 大人から子供へと身体が変化すれば服のサイズはぶかぶかになってしまう。しかし、今ネルが身に纏っている服は彼の身体にぴったりだった。
 この服はまほろば島から持ってきているもので、素材すべてに魔力が込められている。体型に変化があっても適合するようになっていて、尚かつ大人から子供へ体型が変化する際に服のデザインまでも年相応に変わる優れものだった。

 ファッション好きな仲間が作ってくれたもので、島を出る時に便利だからと数着渡された。
 あの時は体型の変化に合うだけで充分だと思っていた。が、今となっては仲間の意見が正しかったと改心している。
 仲間に感謝するネルは自分の格好を確認した後、頬に掛かっている髪を手で払う。
「やっぱり昼間に子供の姿になってしまうのは不便なことが多いな。早く力を取り戻して日中も大人の姿に戻れたら良いのに」
 ネルは肩を竦めると嘆息を漏らした。

 メルゼス国入りする前は四六時中、子供の姿のままだった。
 ネルは体内に宿っている魔力をほぼ使い果たしていた。その結果、これ以上の魔力消費を抑えるために強制的に身体が子供の姿になってしまう。
 シュゼットと出会ってからは徐々にその力を取り戻し、限られた時間の中で大人の姿を取れるまでに回復した。さらに子供でいる時間が日の出から日没までと縮んでいき、今では午後二時頃までになっている。順調に回復を見せいているので、あと一週間もすれば完全に元に戻るだろう。
 大人に戻ったら自発的に子供の姿を取らない限り、少年の姿にはならない。
 いよいよシュゼットに真実を告げる時が近づいている。
 しかしネルにはまだシュゼットに真実を打ち明ける覚悟が持てないでいた。