アル様からこれ以上にない称賛をもらえたのでホッと胸をなで下ろす。
「嬉しいです。ありがとうございます! 早速エードリヒ様に報告しないと!」
 私が手をあわせながらエードリヒ様の喜ぶ姿を思い浮かべていると、突然アル様の笑顔がスーッと消えてしまう。続いて、真剣な声色で私に問い掛けた。

「エードリヒ様というのは王子殿下のことだよね? 王妃殿下からの依頼のはずだけどどうして彼の名前が出てくるの?」
「私に依頼の話をしてくださったのがエードリヒ様なんです。だからまずは彼に報告しないといけなくて」

 理由を説明したものの、アル様の表情は何故か強ばってしまっている。
 暫く黙り込んだ後、不意に彼は突拍子もない質問をしてきた。


「……シュゼット令嬢は王子殿下とどんな関係なの? 恋人、なのかな?」
 どうしてそんなことを尋ねられたのか分からないけれど、彼が冷やかしで言っているようには聞こえない。それよりも余裕のない表情を浮かべるアル様の方が気になってしまって仕方がなかった。
 誠実に答えないといけないような気がして私は背筋を伸ばしてからはっきりと口にした。

「エードリヒ様は、私の大切な人です」
 するとどこかショックを受けた様子のアル様の表情からは、みるみるうちに血の気が引いていく。
「その大切な人というのは一体、どういう意味?」
「え? ええと……」
 蚊の鳴くような、潤みを含んだ声に困惑しつつも、質問に真摯に答える。