「折り入って君に頼みたいことがある」
「エードリヒ様の頼みなら喜んで協力するけれど、役に立てるかしら?」
「シュゼットなら必ず私の力になってくれると信じている。そしてこれは母上たっての希望でもある」
「王妃殿下の?」

 王妃殿下とは小さい頃に何度かお話をしたけれど、フィリップ様との婚約を発表して以降は一度もお会いしていない。彼女もエードリヒ様と同じように会うのを遠慮していたのかもしれない。
「実は今度開かれる母上のバザーの出し物で相談したいことがあるんだ」
 王妃殿下は毎年慈善活動の一環として王宮の庭園でバザーを開いている。


 庭園では王家でいらなくなった装身具や家具が競売に掛けられたり、王妃殿下と侍女が手ずから刺した刺繍のハンカチが売られたりと、王家に縁のあるものがずらりと並ぶ。
 そして多くの貴族たちはこぞってバザーに参加し、それらの品々を買い求めるのだ。
 バザーの売り上げのすべては孤児院や救貧院などに寄付され、衣食住の改善や医療、教育、職業訓練の費用に充てられる。