カヌレ成功の裏には今回もジャクリーン様が一役買って出てくれていた。
 令嬢や夫人が大勢集まる絵画サロンでカヌレの宣伝をしてくれたのだ。サロンの茶菓にフォーチュン・カヌレが出てくると占い好きの令嬢や夫人はその面白さの虜になった。
 占い師のところや占い専門店へ足を運ばずとも自宅で気軽にできるのが良かったらしい。
 フォーチュン・カヌレの存在は貴族の間で急速に広まり、お茶会の定番菓子として出される機会が増えるようになった。

 ある程度の収益が見込めるとは予想していたけれど、正直ここまで人気に火がつくとは思っていなかった。だから、この成功は私にとって、とても嬉しい。
「ここまで売り上げを伸ばすことができたのはアル様のアドバイスがあってこそよね」
 アル様が南西地方に滞在してカヌレを食べた経験がなければ、さらに東方の国へ赴いて占い紙入りクッキーを知っていなければ、今頃フォーチュン・カヌレというお菓子はこの世に存在していなかっただろう。