綺麗に四つ折りにされたクレープの上にオレンジソースがかかった美味しそうな見た目。食欲そそる柑橘系の爽やかな香り。みずみずしいオレンジの隣には金口で絞られた生クリーム、その上には飾り用のミントがのっている。
 ネルはナイフでクレープを一口大にカットすると、オレンジを添えてソースが零れないようフォークに刺して口へと運ぶ。
 口に含めばジューシーなオレンジとほんのりと甘くてしっとりとしたクレープ生地が舌の上にのる。噛めばオレンジの果肉が弾けてさらに口の中はオレンジの甘酸っぱい味に包まれる。

 ――うん、やっぱりシュゼット令嬢のお菓子はどれも美味しい。
「相変わらずシュゼットの作るクレープは美味だ」
 同じような感想をエードリヒも口にする。

 シュゼットはエードリヒの感想を聞いてはにかんだ。
「ありがとう。エードリヒ様の大好物だから美味しいと言ってもらえて嬉しい。レシピも変えずに昔のままのものを使ったの」
「それはありがたい。改良版もさぞかし美味だろうが、昔のままの味を提供してくれたら、私は子供の頃を懐かしむことができる」
「ふふ。そう言うと思いました」

 幼馴染みというだけあって二人の距離は近い。
 二人の間の取り方は似ていて、それが一緒に過ごしてきた時の長さを物語っている。